研究会出席

長年にわたりご指導を賜った樫澤秀木先生の定年退職を記念する研究会に出席する機会を得た。大変光栄なことに、先生の初期業績を概括するという役割をいただき、以下の発表を行った。

吉井千周(2026)「法化論の受容と日本的展開――樫澤秀木の初期法社会学における問題の射程」日本法社会学会九州支部(福岡大学)

鹿児島大学に入学した当初、私は政治学への関心から、学部1・2年のあいだ広く政治学の文献を渉猟していた。その過程で平井一臣先生のゼミに参加する機会を得て、川内原子力発電所をめぐる住民運動をまとめる仕事に携わることができた(幸いにも、この成果は南方新社から一般書籍として刊行された)。この経験を通じて、運動団体がいかに権利を主張し、またそれに対して政府・行政がいかに応答しえないか、あるいは応答しないのかという問いへの関心が芽生えた。そしてそういった住民運動について研究している研究者、樫澤秀木先生が鹿児島大学にいらっしゃることを知った。

その後樫澤先生が「法社会学」という学問を担当されていることを知り、鹿児島大学の法社会学ゼミへの参加を強く希望していた。しかし、私が3年生に進級するタイミングで、当時唯一の法社会学担当教員であった樫澤先生は九州大学へ国内留学になった(今で言うサバティカル)ため、ゼミに参加する機会を逸してしまった。

4年生になり、ようやく樫澤先生の法社会学の講義を受講する機会を得た。法社会学という学問の奥深さとともに、何より先生の学者としての人間性に強く惹かれ、以後、個別にご指導をいただくようになった。大学院のゼミにも加えていただき、ルーマンの『社会システム論』(当時の邦訳タイトル)を一緒に読み進めながら、多くのことを学ばせていただいた。

その後、私は他大学の大学院へと進み、先生も佐賀大学へ移られた。先生は今や日本の法社会学を代表する研究者の一人として、特に法化論と住民運動論において数多くの業績を積み重ねてこられた。

今回、私が担当したのは先生の鹿児島大学在任時代の業績である。あの時代に先生が何を感じ、何を考えていたかを、改めて丁寧に辿り直すことができた。それはまた、自らの学問的原点を再確認する作業でもあった。

会は盛況で、先生はご多忙のなか多くの方々に囲まれており、ゆっくりお話しする時間を持てなかったことは残念であった。しかし、先生がこれからも研究者として、そして人として、社会に対して果たすべき役割を持ち続けておられることを、今回あらためて実感した。

残された研究人生において、少しでも先生の学問と姿勢に近づけるよう、歩んでいきたいと思う。

主の平和。