苫小牧

苫小牧での憲法講演を無事に終えた。

今回は睡眠時間が極端に少ない中での講演で、ふらふらになりながらの講演だった。こういった憲法の講演会では、毎回「憲法前文を契約書として読み直す」というエチュード(即興の一人芝居)をしているのだが(はい、本当に前もって決めていないんです)なんとか終えることができた。もうこういうエネルギッシュな講演は、年齢を重ねると無理なのになぁ、と思いつつも変更することができない。

そのあとの懇親会で、なかなか評判は良かったのでそれはそれで安心なのだが、自分の一本調子の芸風(?)の幅を広げなくてはと思う。切に。日胆地域平和ブロックの皆様には本当にお世話になりました。

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そんなこんなで昨日は講演を終えてホテルで泥のように眠る。そして本日、初めて苫小牧で自由な時間を1日使えることになった。前から興味があったカトリック苫小牧教会にてミサにあずかり、それからウポポイへ。体調は相変わらずなのだが、このタイミングでなければ訪ねられないだろうと思い、少々無理して二カ所を回る。

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カトリック苫小牧教会は、巡回教会になっており、現在は信者による信徒集会が開かれている。富山もそうだったが、日本教区内の神父の数は慢性的に不足しており、こういった巡回教会が多くなっていくのだろう。「聖職者を求める祈り」は、地方では本当に切実な祈りになっていると思う。

そのような事情はあるのだが、苫小牧教会は信者だけの集会にもかかわらず、集会式次が実に豊かだった。驚くことに聖歌は4声。4声で聖歌を最後に聞いたのはどれくらい昔だっただろうか。心打ち震える時間を過ごす。

人数としては東山教会とかわらないぐらいなのだが、やり方によっては神父がいなくともこんなにも豊かなミサが持て、美しい聖歌が歌えるのだと思い感動した。

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ウポポイ(民族共生象徴空間)は、アイヌの生活していた白老町に設立された国立アイヌ民族博物館と国立民族共生公園、そしてアイヌの慰霊施設からなる施設。雨の中であったが、それぞれの施設をゆっくりと見て回ることができた。

民族博物館は国立の博物館ではあるが、非常に小洒落た展示で、観ていて飽きさせない作りになっていた。特にアイヌの伝統舞踊のパフォーマンスはすばらしく、劇場と家屋内の二カ所のどちらの公演も拝見できた。いずれも原始的な音楽が生み出すポリフォニーの美しさに時が過ぎるのを忘れるほどだった。展示エリアの2階から眺める景色も美しく、非常に素晴らしい時間を過ごすことができた。

だが、その2階から眺望できる風景を見ると、日本人は、こんな素晴らしい環境をアイヌの人々から取り上げて北海道を作ったのだなぁとも思った。北海道には至る所にこのような美しい風景があり、アイヌの人々はこの自然を謳歌して自由に生きていたのだろうと思う。実際、展示エリアにはアイヌへの差別の歴史に関するコーナーは少ないようにも感じた。先住民としてのアイヌが主張する鮭の捕獲に関する話を昨年富山で聞いたばかりだったこともあり、全ての差別が解消したかのように捉えられかねない展示はどうかと思った。

(僕ももちろんその一人なのだが)人は見たいように展示を見る。「誰から見ても満足な展示」など存在しないだろうが、アイヌの歴史はこのように語られて良いものだろうか、と美しい風景を見ながら思った。

これから名古屋に帰ります。

主の平和。