イチオシメロディメイカー(まちおん連載21回目)

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周囲のメロディメーカー・・・すいません、今回も・・・<(_ _)>申し訳ないですが、お題を変えさせて下さい。「自分の好きなメロディメーカー」で。

そもそもメロディメーカーとは、なんなのだろう。「良いメロディー」というのは、巷に沢山溢れていて、自分は歌えないし歌わないし意味もわからないけれど、美しいメロディラインというのは確かにある。QueenのBohemian Rhapsodyなんかその代表格で、もちろん言っていることの英単語や文意は分かるが、僕にはこの心境がわからない。昨年発売された菅原裕子 (2021)『「ボヘミアン・ラプソディ」の謎を解く “カミングアウト・ソング"説の真相』光文社新書、も読み物としてとても良かったし、「おそらくそうなんだろうな」というフレディ・マーキュリーの意図も「そうだろうな」と思うし、何よりもこういう書籍をまとめ上げられた菅原さんの筆力にただただ敬服する。

でも、歌えない。声をだして「うたう」ことと、感情を込めて「歌う」ことや「詠う」ことは違う気がする(ちなみにBohemian Rhapsodyは僕のカラオケの十八番なので、コロナ明けにいつか披露します)。

こういうことを単なる感情論に置き換えられるととても困るのだけれど、わかりやすく、うたいやすく、ついつい口ずさんでしまい、言っている意味がいくら陳腐でも(むしろそのような普遍性を有しているからこそ)、ついつい口ずさんでしまう力がある曲を書ける人を尊敬する。その意味では、「浪速のモーツアルト」ことキダ・タロー先生の作品は、つい口ずさんでしまうようなメロディーであり、まさに天才だと思う。

それで、「私の周囲」ではないのだが、このまちおんの趣旨に沿った「好きなメロディーメイカー」として挙げるなら、斉藤和義を挙げたい。

・斉藤和義 – 歌うたいのバラッド(2008 Ver.)[Music Video]

 嗚呼 唄うことは難しいことじゃない
 ただ声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ
   斉藤和義『歌うたいのバラッド』

もうイントロのギターソロだけで、曲が浮かぶ。歌詞に載せて、所々でセブンスコードがやってくる切ない感じとか凄い。メロディだけじゃなくて、バックのギターだけで曲名がわかる人も多いのではないか。

そして、「ポンキッキーズ」で歌われたこの曲も凄いと思う。

・歩いて帰ろう

この曲はアップテンポではじまって、冒頭で登場する

 おーよーーいーーでーくー

というビブラートのかけかたが実に印象的で、おそらくこの部分だけ歌っても曲が思い出せる。もしくは冒頭のギターのカッティングだけで曲全体を思い出せる人が多いのではないか。断っておくと、「歩いて帰ろう」はリリースが1994年。もう30年前近い作品なのだが、このフレーズから曲全体を思い出せる。メロディーメーカーの本質は、一部分の演奏で、曲全体を思い起こさせる力にあるのではないか、と思ったりする。

そして、個人的な斉藤和義のベストメロディとして次の作品を推したい。

・僕の観たビートルズはTVの中

そしてこの曲のリリースは1993年。斉藤和義の一枚目のシングルで、現状の不満を「不満ということがはばかられる」状況などと照らし合わせると、30年近く前と今も対して社会状況を巡るあれこれ(<ここはぼかして書く)は変わっていないし、色あせていないのだろう。
90年以降のJPOPSのメロディーラインの一つの方向を作った人物として、斎藤和義は音楽史に残るべき存在であるように思う。