『100万回生きたねこ』
久しぶりに「泣いた」系の話。
現在勤務している大学は工学系の大学で(経済工学専攻もありますが)、創立してから日が浅く、また規模の小さい私立大学ということもあって図書館の規模も小さい。だが、新しい大学だけあって、創立当初から完全に蔵書がデータベース化されており、司書の取り扱いも良いのか書籍のコンディションがすこぶる良い。かつてタイの大規模国立大学に籍をおいていた身としては隔世の感がある。(いや、本当に某大学のライブラリの扱いは酷かった。)
さて本日タイのジャーナルを探しに図書館を利用したのだが、その折ふと外国語コーナーを見たところ佐野洋子『100万回生きたねこ』の書籍があった。
タイトル通り100万回生き、多くの人々が100万回その死を悲しんだねこのお話。そして、周囲がなぜ自分の死を悲しむのかわからなかった自己愛のかたまりのねこが、最愛の白ねこの死に際して泣きとおして死ぬシーンは、何度読んでも涙をさそう。自分がなんど辛い目に遭って耐えて生き残ることができたとしても、たった一匹の白猫の死には耐えられない。そして愛した大切な猫がいなくなって初めて人々が自分を愛してくれていたかを知る。
我々人間の世界も死の他に恋人・家族・友人といった大切な人々と離ればなれになることはあり、どんなに強い人もその精神的プレッシャーに耐えられるほど強い存在にはなれない。そして自分が愛するものを失って初めて周囲の人々からの愛に気付く。読む度に自分の心の奥底に眠っていた感情を揺り動かされる。
これまで出会った絵本はたくさんあるが、大人になって何度も読み返す絵本というとさほど多くはない。どなたが購入したのかわからないのですが、日本語を学ぶタイの学生達がこういう物語を読んでくれたら嬉しいなぁと思いながら、図書館の片隅で涙しました。
こういう本をビジネス書籍の棚の横にひっそりと置いてくれるような、この大学が大好きです。