武蔵坊のこと

先日、都城市内のとあるお店が閉店になるというので友人夫妻と一緒にでかけてきた。

その店のオーナーはソプラノのM先生で、この数年ほど合唱でお世話になっていた先生であった。

閉店がきまってからのその店には客足が絶えないそうで、その日もやはりM先生ご夫婦のような優しいその店を名残惜しく思った常連さんで店はごったがえしていた。

ピンと角のたったカンパチを出すお店が不味いはずもなく、M先生自らが笑顔でお給仕をしてくださる空間が不愉快なはずもなく、楽しい時間はあっというまに過ぎていった。

「これからはのんびりとすごします」

そう語る先生と旦那様のの笑顔のすがすがしいこと。いつか僕が仕事をリタイアする時、こういう形で終わりたいな、と思った。

そのお店の名前は「武蔵坊」。今月いっぱいの営業だとかで、明日で閉店である。

-
さて、今こうやってGWに入り研究室で仕事をしている。このGW中は学会が控えていることもあるがただひたすら原稿を書いて、事務書類を書いて過ごす予定。

研究者のはしくれとして「研究」なるものをしたいし、教育者と呼ばれるものとしては「教育」なるものもまたしたい。
だが「事務書類」というわけのわからないものに押しつぶされそうな状態で、その「事務書類」をやるためだけに学校に出てきている。
我が文系教員棟は実に10名中6名が登校しているようで、なんだかGWなんか関係ないのである。

なにが悲しくてこんな五月晴れの日に研究室にこもっているんだか、わけがわからない。

やあめた、とすべてを放り出してどこかに出かけたくなる衝動を抑えるので精一杯である。

この仕事をリタイアするその日に、僕はすがすがしい気持ちでこの職場を去ることができるか、ふと考えてしまう。

いや、まだ先のリタイヤの日だけでなく、例えば何かの理由でこの職場を離れるような事態に遭ったとき僕はそのときすがすがしい気持ちでいられるだろうか、と思ってしまう。

リタイアしたM先生ご夫妻が閉店の疲れから解放されたとき、そんな話をしてみたい。