大学の倒産
萩国際大学が民事再生法を申請したそうだ。まぁ俗に言う「倒産」だ。研究に携わるものとして「大学が潰れる」というのは洒落にならない事態で、大学が潰れていない今の状態でも就職がままならないのに、就職口となる大学がまた一つ、また一つと潰れていく。
少子化が進む中、あえて先細りするこの業界を選んだ「大学院博士課程進学者」にとって、こういったニュースは「ぞっとする」話題だ。
この業界、とかく暗いニュースが多い。すでにニュースなどで報道されているが、実は大学の倒産は2校目にあたり、今回のケースがまれというわけではない。立志館大学(「広島安芸女子大学」が改名したもの)が第一号で今回が二校目だ。加えて言うと、『別冊宝島199 大学の醜聞』では、福岡の某大学が(記事中では実名が上がっていた)やはり倒産直前に公的資金の投入で立ち直ったという記載もあり、「いつつぶれてもおかしくない」大学は兼ねてから存在していたのだ。
倒産ではないものの、4年生大学も倒産するほどの学生不足の中で短期大学には早くも学生不足が深刻な問題として現れている。岩手久慈市のアレン国際短大はこの3月に卒業生3人を出して閉学。いやいや、実は大きなニュースとして扱われないだけで、この数年の間に七尾短期大学、洗足学園魚津短期大学も定員を満たせないまま閉学されているし、北海学園北見大、道都大紋別キャンパス、宮崎産業経営大都城キャンパスなどは学部を縮小させ、キャンパスを撤退し、秀明大学国際協力学部のように学部新設5年目にして募集停止を行うといった具合に、今存続している大学も「やっとのことで体裁を保っている」といったところで、これまた明るい要素など何もないままかろうじて存続しているといったところだろう。
たまたま土曜日に見たTBSの「ブロードキャスター」でもこの話題を取り扱っており、これから70ほどの大学は10年以内に潰れるだろうと予測していた。
同じ業界の人間として、「就職口がない状態を憂慮してもなお」こんなに大学ができていいんだろうかと不安になる。現に今年もまた多くの大学が開学されたが、大きな問題を抱えながら開学を迎えたところも多い。。たとえば今年銚子市に開学した千葉科学大学(もともとは「千葉理科大学」として開学予定だったのだが、直前になり現校名へと変わった)は、地元の住民から強固な反対運動が起こり(以前これは自分の論文で扱ったことがあるのですが、大学もまた「迷惑施設」と呼ばれる施設の一つです)、かつこんな問題もおこしているわけで、なかなか頭が痛い。
こんな状況の中で、大学での研究職につくことを目指して大学院に進学するというのは、なんとリスキーなんだろうと思う。
「研究が好きで就職なんか関係ない」
と、知り合いの院生はいうけれど、それはあまりにも想像力がなさすぎる。ありあまるほどの資産がないかぎり、メシを食うのも、部屋を借りるのも困難だ。
今日ボーナスをもらって、嬉しくて、ありがたくてしょうがないその一方で(ボーナスの分の労働もしっかり行っているんであって、「当然の権利」であり、「感謝する必要がない」というつっこみは抜きにして)、やはり背筋が凍る思いがする。今の職場だって、決して安泰ではないのだから。
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関係ない話題ですが、本日新聞をめくって一番驚いたニュースは奥崎謙三の訃報だった。これもまた、いろんな意味で深く考えさせられる出来事だった。