感謝の毎日

授業も3周目にはいる。

登校が朝7時、帰宅が夜9時というスケジュールはそれはそれでハードなのだが、それでもなんとかこなせるようになって周囲に目をこらすことができるようにもなった。

幸いなことに、「研究ができる」という意外にもこのキャンパスで過ごすことのメリットは多く、スケジュールのハードさがさほど気にならない。

たとえば、コンピュータに向かいっぱなしで目や腰が疲れたときには、珈琲をボトルに詰めて葉桜の陰に隠れつつ中庭の芝の上で読書をしてすごしたり(<これはこれで、事務の方々に「先生なにしているんですか?」と怪訝な目でみられたりもするけれど)、また目前の早苗を待つだけの水田を眺めながら、のんびりと小川を散策したり、と実はけっこう緩やかな時間を過ごすことができる。

なによりも、学生たちとのコミュニケーション-授業-がはじまり、自然からうける以上の恵みをいただいている。「先生」と、学生たちに呼ばれるようになり、まだ慣れないけれども、少しづつ学生たちに受け入れられているのを感じる。同時に顧問の吹奏楽部の練習にも顔を出すようになり、しばらくブランクのあった私のほうが学生から教えを請うこともあり、それもまた楽しい。そうそうやっと学食の食券「A定食」の買い方なども教わり、やっと高炭水化物食から脱却できた。

きっとこうやって山を見ては研究に戻り、花を見ては研究に戻り、そして人と出会っては研究に戻るという日々を繰り返すのだと思う。

---
今日、新しい名刺が届いた。教育機関名の入った名刺だ。

すぐさま川崎での最後の晩に友人夫妻がくれた名刺入れに入れてみる。初めて就職した私にとって、友人夫妻は実に気の利いた、そして実に心のこもったプレゼントを送ってくれたのだと改めて思う。近くに友人はいないわけではないけれども、話し合え、議論できる友人がいかに貴重だったのかを名刺入れをみながら今更のように気づく。

葉桜になった貝割れ大根のように小さな緑色の葉をつけた銀杏並木を通って研究室に向かい、研究室にほど近い官舎へと、北斗七星に向かって帰っていく。

こうして毎日が過ぎていく。

こんな僕の毎日はただただ、「感謝」の毎日です。