少数集団の紛争処理制度の研究タイ国モン族を事例として(研究課題番号:18830110)

2006年10月 平成18年度文科省科学研究費補助金[若手研究(スタートアップ)](平成18年度〜平成19年度)課題番号18830110「少数集団の紛争処理制度の研究 タイ国モン族を事例として」研究代表者

初めて取得した科研費研究では、発展途上国における地域開発計画において、少数集団の意志反映が十分に可能である法制度の構築の可能性について研究を行いました。

近代化政策を押し進める発展途上国では、政府主導による地域開発が実施される一方で、それらの開発を原因とする環境破壊や生活環境の破壊といった先住民族・少数民族への権利侵害が多々生じています。

一般的に人々に生じた権利侵害が社会問題として認識されるには、(1)被害者間で権利侵害が行われていることが認知され、(2)被害者間で運動体が組織され、(3)社会の他の成員に対してアピールされていく、というプロセスが必要となりますが、実はこれらのプロセスのそれぞれの局面において人々には多くのリテラシーとコストが要求されます。そのため、深刻な権利侵害が発生していながらも開発側も住民側もそれを認識できず、また発言する機会を失っていることが多々あります。少数民族の権利意識とその表出に関わる研究は、特に政治的弱者への人権侵害という、急を要する問題であるばかりでなく、開発に少なからず参与している日本のODAの見直しなどの立場からいっても早急に対処すべき課題であるといえます。

そこでこの研究では19世紀以降タイに移住し定住するに至ったモン族(HMONG)が、タイの近代法制度に依拠しない紛争処理制度の利用実態を調査しました。具体的にはタイ山地民モン族の紛争処理について現地フィールドワークとアンケート調査を並行的に進め、少数民族独自の慣習法とタイの法規範が衝突した場合にどのように処理を行うか、モン族の2つの村と比較対象としてカレン族の村を中心に大規模な調査を行いました。

本研究の成果として、他地域の開発においても伝統文化に基づいた紛争処理手段を持つ少数民族が近代国家の中で生活するにあたり自らの法規範と国内法との適合の様態について、記すことができたと考えています。

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