齋藤茂吉『白き山』

齋藤茂吉『白き山』岩波書店、を読む。

「晩秋」」に現憲法発布に関する歌があった。

新しき憲法發布の當日となりたりけりな吾はおもはな(『白き山』104頁)

この歌の前の歌がこれ

やうやくにくもくもりはひくく山中に小鳥さえづりわれは眠りぬ

茂吉なりに戦中への想いがあったのだろうと思う。なおその2首あとにこういう歌が

こもごもに心のみだれやまなくに葉廣がしはのもみぢするころ

さらに

夢あまたわれは見たりき然れどもさめての後はそのつまらなさ

戦時下のあれこれで、「考えさせられる」こともなかったのだなぁとか、あれこれを見て思う。
ちなみにその後の章には

鹽(かん)の澤の觀音に途すがら極めて小さき分水嶺あり

とある。戦前・戦中の茂吉に課せられた「小さき分水嶺」の選択をどうおもっていたのだろう。