タイでのお金のお話

一般企業にお勤めの方で現地駐在員としてやってこられる方は、生活に最も必要不可欠な「お金」のやりとりについても社内で対応してくれるのでしょうが、研究者や留学生がやってくるときは、そのやりとりについて自分でなにもかもをこなさなくてはなりません。

中でも日本円で振り込まれる月々の給与(または渡航資金)をどのようにして現地通貨に変えれば良いのか、ということはまず直面する問題です。一年の当初にまとめて資金が振り込まれ、そのあと少しも手出しが必要ない、というのならそれでも構わないのですが、研究者及び留学生の懐事情というのはそんなに恵まれたものではありません。奨学金を頂いて留学される方も、留学前に全てのお金が振り込まれるなんてケースは稀少でしょうし、そんな大金を海外で現金で持ち歩くなどとても考えられないでしょう。

以下試行錯誤して当方が取り組んでいる方法を少しだけ紹介します。

基本的な流れは

1 メインバンク(もしくは他行)に国際カードを発行して貰う
2 国際カードを用いたタイ国内でのバーツによる現金引き出し
3 バーツで下ろした現金の貯金

という流れになります。

1 メインバンク(もしくは他行)に国際カードを発行して貰う

手っ取り早い方法は「メインバンクに国際カード(PLUS)を発行して貰う」ということです。

ところがこれがクセもので、国際「キャッシュカード」でありながら、「海外で引き落とすときにはクレジットカードとして機能する」という類のものがすくなくありません。すなわち、キャッシュカードとして、日本円を現地通貨に替え、少量の手数料を取るぐらいならばよいのですが、それに加えてクレジットカードの海外キャッシング(手数料+利子)としての利用になる、というカードがやたら多いのです。以前は各社ともそうしたキャッシュカードを多く発行していたのですが、現在はこの取り扱いを辞めてしまった銀行が多いようです。
※幸いなことに当方の場合は廃止前に三井住友銀行で作成した国際キャッシュカードが手元にあったため、今後もクレジットカードの利子率に遠慮せずに、基本両替手数料だけで利用できるようになっています。

ところが問題は、会社の給与振込先というのは、たいていの場合指定されている事が多く、またローンの関係や地縁・血縁・義理・人情などの関係でなかなか変更することができないということも多いでしょう。当方の場合も、すでにローンを組んでいるために簡単にメインバンクの変更ができません。そして、この現在メインバンクとなっている銀行は、国際カードを発行していないというオマケつきだったのです。

そこで、「月々の給与が振り込まれるメインバンク」と「国際キャッシュカード発行銀行」間の送金をタイでも可能にするために「インターネットバンキング」の設定を必ず日本で終えておきます。こうすることによって、銀行間のオンライン振込により国際キャッシュカードを用いた現地通貨での現金引き落としが可能になります。

2 国際カードを用いたタイ国内でのバーツによる現金引き出し

さて国際カードを使って、タイ国内で現地通貨(バーツ)を引き出しましょう。

IMG_0720タイは日本以上にATMが充実していて、バンコク都市部であれば100メートルぐらいの感覚で至る所にキャッシュディスペンサーが設置されていますそのいずれもネットワークを介して日本の国際カードが使えるようになっており、日本の国際カードが使えないATMというのは存在しないと言ってもいいでしょう。使い方のポイントは「暗証番号を観られるような位置に人を立たせない」ということで、バンコクのATMでは、暗証番号入力時に手で暗証キーを隠すことを推奨しています。

国際キャッシュカードには両替レートが適用され、また一回の引き落としの度に手数料が発声します。両替レートは、銀行間によってことなりますが、その前日取り扱い最終レートによって決まります。また多額の現金を手元に置くことは危険ですが、同時に何度も小まめに引き落とすと手数料がかかってしまいます。「有利なレートの時にまとめて下ろす」というのが基本ですが、このあたりの兼ね合いは、みなさん各自でご判断下さい。本当はこういう国際カードが2,3枚あればよいのでしょうが、国際カードの年間使用料なども考えるとそんなに多く発行することもできません。生命線ともいえるカードですので、慎重に扱って下さい。

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現在は日本語の利用できるATMも増えています。

意外と知られていないのが、引き落としの上限額です。2015年現在タイでは、外国口座から国際キャッシュカード(国際クレジットカードを含む)を利用したタイへの送金が1日あたり25,000バーツに制限されています。しかも、一回あたりの最大引き落とし金額は20,000バーツ。そんなわけで、家賃などを含む多額の現金通貨の移動がある場合は数日にわたって引き落として用意しておかなければなりません。ですから「タイで高額商品を購入するときは、それが不可能な場合を除いてクレジットカードで購入する」ことをオススメします。

3 バーツで下ろした現金の貯金

タイで働く現地労働者にとって、10,000バーツというのは大金です。それは貧乏な日本の研究者であるわたくしにとっても同じ大金であるのにはかわりないのですが、月収20,000バーツに届かない方が多くいるこの国では、日本人にとっては「少し少なめ」の額もとんでもない大金です。

大きなホテルやコンドミニアムにはセーフティボックスが完備されていますが、やはり一番安心できるのは銀行での預金です。もし現地の銀行が使えるのであれば、「円高の時にできるだけ現地通貨にしておいて、それを現地の銀行に預け、手数料無しに現地銀行のキャッシュカードで下ろす」という使い方がベストだと断言できます。

ただし、現地銀行で口座を開設する、というのはノン・イミグレビザの保有だけでなく、WPを所有している等の条件が必要です。留学の場合はEDビザ若しくはREビザになるのですが、口座開設の際にはビザの提示だけでなく、所属機関からの証明書が必要になります。またタイ語の語学学校の場合などは、こうした証明書を発行してくれないのがデフォルトで銀行口座開設はなかなか難しいようです。ともかく、もしあなたが大学に正規留学しているのであれば、「奨学金の支給のために/給与の支払いのために」どうしても必要だと主張して、ぜひレターを発行してもらってください。

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以上簡単にまとめましたが、海外送金には他にも方法はないわけではありません。ともあれ日本での給与・資金をいかに手間をかけず、リスクも少ないままで、高レートでタイに持ってくるか、ということについてまとめてみました。何かのお役に立てれば幸いです。