「ボタン・ボタン」とアルトトロンボーンの響き

知人が多く所属する女性コーラス「かれん」のファーストコンサート。もちろん指導は友人K氏で、ハンガリーの楽曲を中心とした楽しい演奏会。留学生さんと二人で観賞する。

ハンガリー語の音が多彩だからか、それともK氏の指導がスバラシイからか。そのできあがりに驚く。中でも地方の村の音楽を採取したという「ボタンボタン」という曲など、曲の始めから終わりまで、ころころとした音の響きについ引き込まれてしまう。混声合唱ならばバス・バリトンの重厚なリズムが曲に重たさを与えてしまい、弾むようなリズムを台無しにしてしまいかねないのだが、今回の女性コーラスでは女性の低音域アルトで言葉遊びのように音楽が続いていき、「ころころ」感が倍増されている。その歌っていて楽しそうな様子が聴く方にも伝わりとても気持ちがいい。

大きな喜びに満たされつつ、もう少しのんびりしていたい気持ちに後ろ髪を引かれるようにして霧島へと移動。生憎とこの日は翌日のオーケストラの本番を前にしたゲネプロになっており、第一部を聴いた段階で失礼ながら退席し霧島へと向かう。
曇り気味の空はいかにも泣き出しそうなのだが、先ほど聴いた女声合唱のおかげで気持ちは軽やか。最初で最後のホール練習で前日にばっちりと調整したアルトトロンボーンのスライドが最高に調子がいい。まさしく「ボタン・ボタン」といった感じで、自分自身が吹いていて気持ちのいい「初めてのホールでのアルトトロンボーン」の音を十分に堪能する。ほかに吹き比べたアルトトロンボーンは少ないがYAMAHAのアルトは変な飾りがないぶんだけすごく素直な音がする。High EsからまじまるEs-durを吹いていると周囲から「まるでトランペットのよう」との声。でも吹いている僕としてはやっぱりこれは「アルト」で、通常吹いているドイツ管テナーが男性の高音領域だとしたら、やはり女性的な音がする。
そう、イメージするのは昼に聴いたばかりの女性コーラスのアルトで、「ボタン・ボタン」と転がるようなリズムを刻み、音をイメージする。

さぁ、本番は明日。アルトトロンボーンは「ボタン・ボタン」と鳴ってくれるだろうか。請うご期待。