月とたこ焼き

今日もとにかく忙しい一日。

というか、何をやってもおもしろいときは、一分一秒が惜しく、目覚めてすぐに朝5時には学校に向かい、執筆中の論文に加筆。

加えて本日は前期最後の授業。知的財産権という、今期持っている授業では唯一の大学4年生対象の授業で、 かなり気合いを入れて教えた学年だ。初めてフルで15回のコマを持った大学生だ。ただただ感慨深い。

この学生さんの学歴のうちに担当した知的財産権がはいるのだ。これまで専門学校や予備校で教えてきたけれど、 それは資格や志望校合格という目的のためのお手伝いであり、受講していた学生さんにとっては僕の授業をうけることは、生徒さんの 「やりたいこと」の通過地点にある技術でしかなかった。

無論、そうした予備校と専門学校での「教える」ことにも意味はあり、多くの学びがあったのだが、 今はこの授業を終えることを目的に学生さんがやってくるわけで、今までとは異なる責任を背負っている。

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授業を終えた後、今日はちょっとかわった会議。学内でセクシャルハラスメント委員会の設置が検討されており、 その規約を作成するための話し合い。

「なんちゃって」法学者の自分なんだけれど、ジェンダー関係のテクストを読み込んできたことが、とても役に立ったわけで、 乱読も結構役に立つものだと感心する。やはりこれは、、、L先生に感謝せねばならないのだろうか(笑)。

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三時間にも及ぶ会議が終わった時間はすでに夜遅く、闇夜の中に自分の黄色の車が光る。そして空にも一四夜の月が光る。 そんな黄色の月を横目に見ながら自宅へと車を走らせたのだが、たこ焼きが無性に食べたくなる。

「黄色い月をみていたらたこ焼きを思い出した」のではなく、なんだかとても切なくなって、こんなに充実している毎日なのに、 「充実ばかりでいいのか」と心の中で声がする。

そして、昔タイに住んでいたとき、互いに励まし合っていた仲の良い友人達とたこ焼きを肴に飲んだことがあって、 そのことをつい思い出した。

安いビールとたこ焼きと、屋台で買ったおつまみで夜通し飲んだんだっけ。

何もなかったけれど、何かを探してみんな必死だったあのころ、何もなかったけれどとても充実した時間を過ごしていた。

そして今のように一人じゃなかった。

今は確かに充実していて、神様にも毎日を感謝していてなんの不満もない日々で、でもなぜだかたまに泣きたくなる。 また新たな目標を探して今の安住の立場を捨てて、新しいことにチャレンジしなくちゃと、声にならない声が心を揺さぶっているのだと思う。

「幸せな」日々に感謝しつつも、また「動き出さなきゃ」行けないのだと思う。

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24時間営業のスーパーで材料を買って自宅で焼いて食べる。ネギとタコだけのシンプルなたこ焼きを一人で食べる。

プレートの上でぐつぐつ言っているたこ焼きは、いびつな十六夜のお月さんのようで、また生きて行けるなぁと思ったのだった。