バレンタインデー前の雑談

横浜のデパートで待ち合わせ。地下総菜売り場を総菜を求めて移動する。

デパ地下の食料品売り場の雑然とした雰囲気が好きで、以前はけっこう足を運んでいたのだが実に久しぶり。スーパーの生鮮売り場などとも違う、少々値の張る商品を見ながら、のんびりと時間を過ごし、店頭販売の切符のいい口調に酔いしれる。焼きたてのパン、蒸したてのシュウマイ、緑茶の香りなどを楽しみ時間をすごす。まるでタイの市場のような雑多な空間だ。

言うまでもなく、この時期デパートはバレンタインデー一色になっている。菓子コーナーから総菜コーナーに至るまで、至る所にハートマークをあしらったPOP広告が並ぶ。「チョコレート業界の陰謀だ」とか、「独り者の男はなぁ・・・」などとブログに書いてみたところで、ありきたりの話題に落ち着いてしまう。この時期にデパートにバレンタインデーのPOPが並ぶのも、ブログにバレンタインデーの記事が並ぶのも日本の風物詩の一つなのだろう。

一通り用件をすませた後に乾物コーナーを通り過ぎようとすると、やはりバレンタインのPOPが並んでいることに気づく。・・・これは結構衝撃的な風景だ。というのも、実は以前本命の彼女からバレンタインデーに海苔の佃煮の詰め合わせをもらったという経験がある。
当時我々は「つきあっているはず」で「ラブラブ」のはずで、でも「バレンタインデー」の包装紙をめくって「海苔の佃煮」が出てきたときの衝撃をどう表現すればいいのだろう。当時貧乏だった僕のことを考えて「海苔の佃煮」を彼女は買ってきたのだという。そして決定的だったのは「いやー本当はチョコレートも買っているんでしょ」と思ったのだが、本当に海苔の佃煮だけだったことだ。

たぶんバレンタインデーに本命の彼女から海苔の佃煮をもらった彼氏の正しい反応は「ありがとう」でも「俺のことをこんなに愛してくれているなんて・・・」でもなく、ただただ「???」だろう。

買った彼女も変だが、一番ヘンなのは海苔佃煮をバレンタインデーのラッピングをして売っている業者だ(T-T)。そしてこうした商業主義的なにおいのするイベントに懐疑的な自分が、実は「やっぱり本命の彼女からはチョコレートをもらいたい」と思っていたことを知り、シーズンイベントから距離を置くようになったのもこのときからだった。

なお、このときの彼女とは、これがきっかけとなったかどうかはわからないが、その後数ヶ月してお別れすることになってしまった。よくよく考えればホワイトデーに京都の千枚漬けを買ったのが原因なのかもしれない。ああ、チョコレートなんか・・・嫌いだ(T-T)。(ちなみに今は「茶が嫌い」)