お流れ

友人を偲ぶ会に出席するため、隣県へ車を走らせる。

筋ジストロフィーで亡くなった友人は、僕が研究者になるために一番原動力となった人間の一人。彼の優しいまなざしから多くのことを学び、当時彼と接していた人間達は多くその道を変えていった。

「優しく生きる」、という生き方ができることを、彼から教えられた。

人との出会いに感謝し、夜空の花火に感謝し、当時流行ったばかりのマッキントッシュのエッチな画像にも感動し、小林よしのりの漫画にも感動していた友人は、生きているのが本当に楽しそうだった。

その静かな目で、君は優しさを周りにあげていたんだなぁと思う。

おいらなんかよりぜんぜんお洒落で、形見分けのジャケットは今でも僕は愛用していたりなんかする。

---

道すがら友人のことを思い出し、胸一杯になりながらその肝心の「偲ぶ会」の会場となる友人宅に着く。だがまるで人気がない。 おかしいな、と思って電話してみるがだれもでない。短歌の師匠に電話してみると、ご不幸があって、ご家族がご実家に戻られたとのこと。 そして、どうしても僕にだけ連絡が届かなかったということだった。

なんだか肩すかしだったのだけれど、「盛り上がった」感情は収まらず、とにかく誰かと話をしたくて、こういう思いを共有してくれそうな知人に電話をするのだが、あいにくの不在。つまり、ふられちゃったわけで、とぼとぼと自宅に帰る。

再び高速道路に乗り、部屋へと戻る道すがら、パーキングエリアに立ち寄る。 すっかり涼しくなった秋の風の中で見上げる星空がこれまた美しく、2,3時間ほどのんびりと眺める。

たまに一人になったときにしかこういった星々の美しさに気づかないうちは、まだまだ友人の足下にも及ばないと思う。