個人的レコード大賞(まちおん連載13回目)

今回のお題は、「個人的レコード大賞」とのこと。これは好企画と思う。というのも、歌謡曲については、「売れたか売れなかったか」という基準だけでその年のレコード大賞を決めてよいと思うのだが、「人に希望を与えた」とかなんとか別の要素が入ってきて、とにかく面倒くさくなってきた世の中になったように思う。
レコード大賞ぐらい、様々なへりくつは抜きにして「一番売れた曲」でいいんじゃないかと思う(ネット配信も当然の時代で「聴かれた曲」で)。

その意味では「個人的レコード大賞」なんだけれど、まずはセールス的に成功したAdo(2020)『うっせぇわ』で今年はいいんじゃないだろうか。むしろ他にあるのか?といいたい。

『うっせぇわ』は、厳密に言えば、昨年11月の作品であり昨年12月には話題となっていたので「今年」の作品ではないのだけれど、本格的にメディアに取り上げられるようになったのは今年からなので、もう今年の作品ということでいいんじゃないか・・・とか思っていたら、今年の『輝け日本レコード大賞』でも特別賞にノミネートされている。

 はぁ?うっせぇうっせぇうっせぇわ
 あなたが思うより健康です
 一切合切凡庸な
 あなたじゃ分からないかもね
      『うっせぇわ』Ado

赤木ファイル事件のあれこれ、大臣や国会議員の問題発言のあれこれ、「うっせぇわ」ということが多く辟易していた。コロナ対応の消毒のあれこれにも神経をすり減らし、実際にマスクを拒否したり、消毒を避けたり、ワクチンを拒否することはしないのだが、でもノイズキャンセリングヘッドフォンの中でだれかが代わりに「うっせぇわ」と叫んでくれるのは少し胸がすく思いがする。「うっせぇわ」という言葉を叫びたいのはみなそうなんだろう、とか思いつつ。

しかし、この「うっせぇわ」が人々のガス抜きに消費されるだけの社会でも困る。今年の衆議院選挙では、政治的トピックの多さに比べると投票率も高くはならなかった。不思議なアベノマスクのその後や、不思議な国のお金の消え方のあれこれ。福島では、未だに地元に帰れない人がいて、職がないまま(またはひどい労働条件で)年を越す人々、コロナ禍の中で業績不振な各産業のあれこれも現状は暗いままだ。
みなそれぞれに不満はあって「うっせぇわ」を聴く時代ではあっても、「うっせぇわ」を叫ぶ人々は少なく、多くの国民は叫べないし、叫ばない。この曲が批判しているのは、まさにそういう多数の人々(大衆)なんだけれど、そういう大衆によってこの曲が消費されるところが、更に「日本はこれからどうなっていくのだろう」と思わせる。

そんな2021年の「レコード大賞」として、セールス的にも成功し世相を表す曲として『うっせぇわ』を強く推したい。

都城工業高等専門学校准教授(法学)

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