私がオススメする渾身の一枚その② 浜田真理子 「mariko」(まちおん連載5回目)

私がオススメする渾身の一枚その② 浜田真理子 「mariko」

今回のお題は「私がオススメする渾身の一枚その②」ということで、僕などが紹介するのもおこがましいのですが、浜田真理子 (1998)「mariko」をオススメしたい。以下、尊敬と親しみを込めて「真理子さん」と文中で紹介させて頂きます。

実は真理子さんのことを知ったのは、「スクールMARIKO」というイベントで、福島原発のメルトダウンをきっかけに島根で始められた原発問題の勉強会だった。原発の社会問題を扱っていた僕を廃炉問題を語るために松江に呼んでいただいたのだった。幸運なことに真理子さんの歌を初めてにして、生で聞かせていただいた。本当に恥ずべき事なのだが、このお話を頂くまで不勉強な僕は真理子さんのことをまったく知らなかった。

そんな勉強会の折に頂いたCDのなかの一枚が1stアルバムの「mariko」だった。収録曲は以下のとおり。

1.THE CROW
2.YUJI
3.のこされし者のうた
4.SEPTEMBER
5.Mariko’s BLUES
6.song never sung
7.COUNTRY SONG
8.AMERICA
9.WALTZ FOR WOODY

松江からの帰路、ずっと車の中で再生して聞き込んでしまった。収録曲のどれも素晴らしいのだが「のこされし者のうた」を一度聞いてみてほしい。人生においてなんども繰り返される別離において、「のこされし者」は、離れていく人を止める事はできない。体も心も振り絞って「わたしをおいてゆかないで」と願うしかない。この曲の最後の歌詞はこうだ。

 やさしい風よあの人に届け
 心のかけらをのせてゆけ
 あなたの暮らす遠い空に
 涙の雨が降ったなら
 ああ わたしを 思い出して
        浜田真理子「のこされし者のうた」

※著作権の関係から歌詞の全てを転載できないので、「のこされし者のうた」の歌詞はこちらのリンク先をご覧下さい。

ああ、本当に美しく率直な歌詞だなと思う。月並みな言い方になってしまうのだが、「等身大の自分を等身大にうたう」という大変難しいことをさらっとやってのけている。ふがいない自分の姿も、そのままでさらっと真理子さんは歌にする。そしてそれは、簡単にできることではない。

そういえば原発の問題について語る真理子さんは、率直な疑問をいくつも僕に投げられた。そのときの真理子さんと僕のやりとりを「カナリヤが鳴く時」というタイトルでブログに書いた。詳細はブログを観てほしいのだが、「なぜこうした勉強会を継続しているのか」と真理子さんにお尋ねしたところ「音楽家はカナリヤだから」と真理子さんは答えられたのだった。ここで言うカナリヤとは、炭鉱夫と共に坑道に入りガス漏れの異常を検知する犠牲となるカナリヤのことだ。音楽家は世の中のおかしな空気を真っ先に感じて鳴き、我々に異常を伝えるのだという。真理子さんの歌の世界は、なかなか僕らが感知することのできないけれど大切な人間の小さな感情がメロディに乗って伝わってくる。多くの人にとって、自分の感情と自分で向かい合うことはとても難しいことだと思うのだが、「カナリヤ」の真理子さんはそれに気づき、そして歌う。

そんな真理子さんの世界をどうかこの1枚でじっくり味わって欲しい。

都城工業高等専門学校准教授(法学)

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