INFERIOR−劣ったもの

コロナのせいで自宅待機が続く中、積ん読だった書籍を一挙に読む。「読まなきゃならない」書籍や、送っていただいた書籍、そして「読みたくもない書籍」と様々な書籍が散乱する中で、タイトルに惹かれて順番を入れ替えて、届いたばかりのアンジェラ・サイニー[東郷えりか訳](2019)『科学の女性差別と闘う』作品社,を読む。

2017年に英語で出版された書籍とのことで、原題の「INFERIOR」は、「劣ったもの」という意味。邦訳の著者がこの日本語訳にしたようだ。女性に対する感覚が鈍い(と思われる)日本社会では、INFERIORの語が「女性」であることを指し示すことが想像されにくく、このようにタイトルを付けなければ、本書のテーマを端的に示すことはできなかったのではないかと思う。その意味では、良い邦訳のタイトルではなかったか。

さて、本著は科学業界における女性差別からはじまり、女性をめぐる様々な「科学的と思われてきた」言説について、丁寧に反論を試みる。非常に網羅的で、女性をめぐる言説を考える際の教科書としても使用できるのではないかと思う。刺激的であるばかりでなく、極めて論理的な説明に度々ページを止めて、考え込んでしまう。女性をめぐる言説が、自分の性である「男性」のジェンダーを(往々にして、女性を抑圧するやり方で)こうやって補強していたのかと自身の性についても考えさせられる。

また、類人猿の考察から人間社会を見る方法については、久しく触れておらず、これもまた参考になった。人間はサルではないが、サルより利口なわけではなく、さほど進歩したと考えないほうがよいだろう。僕はゼミを運営していないけれども、ゼミを運営していたら輪読会で読みたい本だった。

今日8月9日(日)は長崎に原子力爆弾が落とされた日。INFERIOR−劣ったもの、とされたのは女性だけではなく、さまざまなものがINFERIORな状態にSUPERIOR(優れたもの)から虐げられてきた歴史の最たるものが戦争や原爆をめぐるあれこれだ。女性をめぐる抑圧の歴史として読むのではなく、「SUPERIOR」達による、INFERIORなものへの暴力の歴史として学生に薦めたい。

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