労働組合とは何か

届いたばかりの木下武男(2021)『労働組合とは何か』岩波新書、を読む。入浴しながら読み始めたら、面白すぎて最後まで読み通してしまい、のぼせてしまった。

労働組合史について自己の不勉強さがよくわかった一冊だった。ドイツにおける楽器マイスターのユニオンとかそういうところで値段の設定について聞きかじっていた程度だったのだが、かなりイメージが明確になった。労働組合史としても非常に得るところの多い一冊だが、日本の労働組合の現状について分析を行い、また今後の方向性について示唆しているところも非常に参考になった。日本の労働組合関係者といわず、労働者は全員必読では。特に「関西地区生コン支部」に言及している第8章は日本においても産業別労働組合が結成できるその条件/可能性を示唆しており、感銘を受ける。

「ユニオニズムは理想論でも、遠い先の目標でもない。働く者の深まる悲惨な状況を克服する唯一の道である。」p.223

とは、なんと力強い言葉か。実際に取り上げられている関西生コン支部の労働運動における話のなんと生々しいことか。多くの人々の手で、産業別労働組合が結成された要素がよくわかる。演奏家協会やプロ野球労組などの例も非常におもしろい。

また、
「2000年以降の時間は、無駄な時のようでもあり、また貴重な流れのようでもあった。無駄というのは「旧来型労働組合」が時代に取り残され、衰退の道を歩む時期だったからだ。けれども、その労働組合の外にいた者にとっては価値のある時間だった。」p.275
という言葉も実に重い。これから日本は社民党という社会民主主義を標榜した政党が立憲民主党と大半が合流する時代がやってくる。立憲民主党もまた旧来型労働組合の延長のようにしかふるまわないのだとしたら、大半の労働組合が時代の変化に乗り遅れた例の一つとして、今後語り継がれていくのだろうか、と考えさせられた。

そして、研究者業界における、若手研究者の窮状を知ればしるほど正規労働者の研究者の責任についても考えさせられる。
この地域では「他に引き受け手がない」という理由で憲法を含む多くの仕事がたかだか高専の法社会学の教員に回ってくるし、それがまたしがない我が家の生活にはありがたいのだが「大学で法学の専任教員を一人雇いなさいよ」と言えるようなギルドの強さがあれば、と夢想したり。
ともあれ、労働組合関係者といわず、労働者のみなさまにぜひ一読をお勧めしたい。
・・・あ、読書会とかしますか?