カボチャ

カボチャの煮物を炊く。

みりんと醤油で煮込む。
とろ火で時間をかけてじっくりしあげる。
黄金色のカボチャに醤油の色が染みていき、柔らかい太陽の色へと変わっていく。

「あたたかさ」だけが最高のご馳走になるような一日で、夕方になり降り出した雨はますます気温を下げたようだ。

窓から見える空もまた曇りで、鍋のなかだけに太陽が見える。
その素朴なカボチャの煮物をほかほかのご飯にでれっとかけてかっこむ。

-思えばうちのじいさんとばあさんも毎日のように素朴な煮物を食べていたんだったっけ。
-暖かいお茶をのみながら、じいさんと一日中一緒にいたっけ。

なんて思い出しながら、一日が過ぎる。

カボチャ一つで喜べる自分はなんて安いんだろうとも思う。
でも今日一日も、またとても豊かな時間をすごせた。カボチャの煮物一つで、こんなに幸せでいいんだろうかと思う。

一つ一つ書けないけれど、最近のニュースは本当につらいものが多い。そしてニュースにならない人間の哀しみはもっとたくさんあるだろう。

哀しみにくれる人々の心の痛みが少しでも軽くなりますように。豊かな食卓でなくても、カボチャ一つ分ほどの喜びがありますように。

傷ついた人の心がどうか癒されますように。