一年のうちに一度だけ

一年のうちに一度だけ、例年こうして日記を書くことを続けています。

今日、また年齢を重ねました。が、それは決してめでたいわけでもなく、平常運転のまま静かに時間が過ぎていきます。
例年向かえる誕生日の度に、自分は感謝することばかり多い人生を送っているなぁ、と感じています。お世話になった方々に何一つ恩返しをしていない年月であったと、一年過ぎる度に反省ばかりです。

10年前、今の職場に入る前にやはりこうしてタイで誕生日を向かえたことを思い出しました。現在住んでいるマンションから見える、小さな窓しかない中国式のタウンハウスの旧い建物の部屋でした。ただし、その住み心地は悪くなく、破格の値段で住まわせてもらっていました。

周囲に住むネコと、街の通りの雰囲気が懐かしく、今回タイに赴任するにあたって、住まいを探すときにこのエリアで真っ先に部屋を探したのもそれが理由でした。

再開発が進むバンコクの中で、その旧い建物は奇跡的に今でも残っています。その部屋に灯りがともっている風景を見ると、あの部屋には、どんな人が住んでいるのだろう、と思いを馳せます。
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久しぶりのタイの生活はとても充実しています。街を闊歩するネコ達はりりしく、それを見守る人々の眼差しの優しさも相変わらずです。愛想の悪い店員が有名な台湾料理屋も相変わらずで、しかし10年前に食べたあの味と同じ料理は今も健在です。そうしたこの土地で再び出会った人やモノや動物たちのの出会いは、感傷的に心を動かしてやまないというようなダイナミックなものではなく、静かに時の流れを感じられるような、そんな張り詰めた世界の静けさに似て、僕の心を引き締めます。

年齢を重ねることは、僕の回りをとりまく「世界」をこうして静かに味わせてくれるようなそんな成長を僕に与えてくれたようです。
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・・・劇的なことはなにもなく、どこかでテレビの音がして、マンションのエレベーターのモーターがかすかにうなっている音が聞こえています。

でもそういう日常は嫌ではありません。

そんなバンコクでの誕生日の一日でした。