『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』

『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』

久しぶりに日曜日を自宅でのんびり過ごす。昼からは積ん読だった書籍の処理。
エルネスト・チェ・ゲバラ(棚橋加奈江訳)(1997)『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』現代企画室。オリジナルは1992年にキューバで発刊されたもの。このコロナ禍の中、なかなか旅行ができない状態がつづく中、23歳のゲバラと共に未踏の地を尋ねる感覚を体験したくて買い求めた。
もうこの年齢になると、各地を回っても名所・旧跡をめぐるということはほとんどなく、自分の研究テーマに合いそうな地域をずっと回る。ゲバラの日記でも、名所・旧跡の類に立ち寄った形跡は見られるものの、各地のハンセン病療養施設などを多くめぐっているのが彼の関心を表しているようで、自分が同じように旅していたら同じような場所を訪ね、同じように感じたのだろうか、などと思いながら読み進めた。そして、70年以上前に青年ゲバラが見聞した状況は、残念ながら現代日本の貧困・差別と重なるようにも見える。
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この旅の冒頭でゲバラは

「満月の輪郭が海の上に浮かび上がり、銀色の反射で波を覆う。僕らは小さな砂丘に腰を下ろし、いろんな強さの力で波が寄せたりひいたりするのを眺めている。僕にとって海はいつでも相談相手であり、僕の言うこと全てに耳を傾けてくれて、信頼のもとに打ち明けられた秘密を漏らしてしまうことなく、一番良い助言をしてくれる、そんな友達だ。」(p.15-16)

と記している。この書籍を出版したキューバの革命政府による美化はきっとあるだろうが(文末の「日本語版改題」でそのことにも言及されている)、こうした詩的な文章を書けることが、革命の原動力になったのだろうか、とも思いつつ。

主の平和。