日本の脆弱性が表れる場所

鈴木江理子編著(2021)『アンダーコロナの移民たち 日本の社会の脆弱性があらわれた場所』明石書店、読了。

コロナ禍の下過酷な状況に置かれている在日外国人について詳細な分析がなされている。取り上げられている在日外国人のケースも滞在資格・出身国・居住地域が実に多様で多くの外国人問題を網羅的に理解できる一冊。タイトルがあまりにもストレートすぎなのだが、他に言葉を置き換えることなど不可能な「日本の脆弱性」がよくわかる。

一つ一つの論文で、日本における外国人問題を網羅的に取り扱っているのがまた凄い。出身国・在留形態・所属するコミュニティの支援など多岐にわたっており、現在の在日外国人問題はほぼこれ一冊でカバーできるのではないかと思うほど。研究する人間の一人として、こういった成果がまとめられることに嫉妬を覚える。

だが、何よりも一人一人の書き手がそれぞれの人々に真正面から向かい合っているのも頭が下がる。当事者との距離感がとても良いと思った。生き方と発表論文の間にブレがなく、「わたしたち」の問題として取り上げているのも素晴らしかった。

現在原発関係の書籍では、最近発刊され話題になっている青木美希(2021)『いないことにされる私たち 福島第一原発事故10年目の「言ってはいけない真実」』朝日新聞出版、で自主避難者に対する「いないことにする」政策の問題点が指摘されているが、このコロナ禍の下で「いないことにされている」のは在日外国人の問題も同様に深刻だ。

海外からのオリンピックの選手団への厚遇と異なり、それ以外の資格で日本にいる外国人に日本社会はなんと冷遇しているか。ぜひご一読を。