冬支度

 

早朝、目が覚めてから眠れなくなり、積ん読の本に手を伸ばす。中沢新一(2004)『僕の叔父さん 網野善彦』集英社新書、読了。すばるに連載されていたころから気にしていた文章で、連載時は枚数の関係から「おもしろい」とは思うものの「読み足りなさ」を感じていたが、本書では大幅に加筆が加えられており、かなり読み応えのある文章となっていた。網野善彦という歴史学の巨人がどういう思考経過を経て網野史学を形成していったかということがわかるだけでなく、中沢新一という希有な才能を持ったニュー・アカデミズムの旗手がどのような環境で育ったかを知る手がかりにもなる。中沢氏の父、叔父、伯父といった周辺の人々とやりとりされる議論の数々はそれが家庭の中で繰り広げられるにはあまりにもスリリングな学問のエッセンスがつまりすぎている。こういう環境が家庭の中にあるなんて・・・。羨望というのはこういう時に使う言葉なのだろう。

その後、この場で紹介しても余りおもしろくないような研究書の類を読み、ふとRSSリーダーに目をやるとインドとパキスタン、和平推進の方針で一致というニュースが。イラク、ウクライナ、パレスチナ、ネパールといった紛争の話題が絶えない中、こういったニュースはほっとする。

本日は家庭教師のために横浜まで移動。少し早めにスタートして、生徒さんと楽しく勉強。一題一題をクリアしていく彼の姿からはこちらのほうも励まされることが多い。のんびりと、こたつで勉強を教えるのもいいものだ。

すっかり寒くなった日本の冬を越すためのコートがなく、帰宅時に横浜で冬物のコートを買う。そしていつもの狸小路で軽く体を暖めて帰宅。

冬だからということもあるけれど「あったかい」場所は心も落ち着く。買ったばかりのコート一枚だけで、こんなに心も落ち着く。新潟では、まだ寒いテントでの生活を送っている方々が多いことを考えると心が痛い。どうか、暖かい場所が被災した方々にも提供されますように。

就寝前、宮部みゆき(1998)『地下街の雨』集英社文庫、を読む。表題作「地下街の雨」は佳作の多い宮部作品の中でも傑出の短編だった。宮部さんはなぜ複雑な人間の感情をこんなに鋭い言葉で描くことができるのだろう。

「あなたはわたしの喉をかき切っておいて、傷は浅いという。わたしの息を停めておいて別の人生を歩めと言う。」(「地下街の雨」)
別れを切り出す男の台詞の身勝手さを女性の立場から、これほど真摯にかつ端的に描ける作家などしばらくでないだろう。

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