モン語(HMONG)学習リソース

日本でモン語を学習しようとするといくつかの困難があります。まずはなんといっても、日本にモン語に関する文献が少ないことです。「なにをおっしゃる、モン語の本はたくさんありますよ、東京外大にもたくさんあるじゃないですか」と出かけてみると、実はモン語はモン語でもMonのほうだったりします。

こういうお問い合わせは未だに多く、例えば、僕のところにはMonが作ったといわれるハリブチャイ王国について話をしてほしいというメールが届いたことがありました。その後、このことがきっかけとなり、この団体で「MonではなくHmong」についてお話させて頂く機会もあり、何がきっかけになるかよくわからないなぁと思うこともちらほらでした。

でも、もう一度強調しておきますが、ここで扱っているのはHmongです。Hmong。(T-T)

※ ちなみに吉井の使える語学は、日本語、英語、フランス語、タイ語、モン語です。もし、ラオス語、中国語、ベトナム語でかかれたモン語の入門書をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください。

・モン語の入門書

三上直光編『苗[フモン]語基礎1500語』

出版年:1999 出版社:大学書林 ISBN:4-475-01119-1 モン語区別:白モン語 実用度:☆☆☆☆☆

待ちに待った日本語によるモン語の本です。単語集と銘打っていますが、前半部分でモン語文法の解説もあり、日本国内でもっとも入手しやすいとうだけでなく、書かれ方も丁寧で正確。そして、北タイ、ラオスのモン族に絞っているところも、タイのモン族に興味がある人には大変便利です。もっともお勧めの本。表記はRPAモン。ただし、本文はモン語−日本語の単語集なので、「日本語でいう『○○○』って、モン語でなんていうんだろう」というような用途には不向き。少々高いですが、ポケットに入るサイズで山に行くときにはぜひこっそり忍ばせておくといいでしょう。続編で会話集などがでないかなー、と勝手に希望。現在Amazon.comで注文できます。

戸部実之『タイ山岳民族言語入門』

出版年:1994 出版社:泰流社 モン語区別:● 実用度:●

少々難があり、訳も例文もそして発音も全てが不適切です。日本語で書かれている、と言う以外のメリットを見つけるのが難しく、多くの点で問題があるのでお勧めはしません。現在Amazon.comで注文できます。

Sangwit Chuamsakul, Phaasaa Meew Nam Ngen

出版年:1995 出版社:Sathaabanwichai Chao Khao モン語区別:青モン 実用度:☆☆☆ 用途:入門書

タイ語で書かれたモン語の入門書で、タイトルは「青モン語」発行は「山地民研究所」となっています。どうも、福祉局の『山地民研究所』とは異なる団体のようです。このあたりの事情をご存じの方はいらっしゃいませんか?モン語の文法構造から始まって、人称代名詞の使い方、否定文の作り方、といった日本の英語のテキストのような作りになっています。タイ語が使える方には、一番いいテキストになると思います。チェンマイ大学図書館においてあります。

Hill
Tribes Phrasebook

出版年:1999 出版社:Lonely Planet 出版地:Oakland, USA ISBN:0-826442-635-6 モン語区別:青モン語 実用度:☆☆☆☆☆ 用途:入門向

まず本格的に勉強しよう、という前に、ちょっとだけかじってみたい、という方に入手しやすく、わかりやすい、という意味でこの本をおすすめします。出版社は英語のガイドブックで定評のあるLonely
Planetで、旅行者用のフレーズブックです。短期滞在者向けのものですね。また、Hmongだけでなく、複数の山岳民族の言葉を取り扱っています。

しかし、モン語の項を担当しているNerida Jarkeyは、モン族に関しての研究でAustralian Nationa UnivesityでPh.Dをとっている方で、モン族についても、その風習・歴史などきわめてシンプルに、そして大変丁寧に書かれています。現在はUniversity
of Sydneyでなぜか日本語を教えていらっしゃるそうですが、まぁ、モン語をカリキュラムにいれる大学はなかなかないと思いますので、それはしょうがないと思います。コンパクトな外見では判断できないほど良心的であり学問的な体裁が整っています。

タイで入手するのでしたらASIA Booksなどにおいてはありますが、品揃えはよくありません。チェンマイ市内のSuriwon Books Centerなどには山積みになっています。こまめに版も改訂されているところもミソです。ただし、モン語の記述RPAを前半部分で、しっかりマスターすることが必要です。中学英語ぐらいで簡単に読めますので、どうぞ敬遠なさらずに購入してみてください。現在Amazon.comで注文できます。

English-Hmong
Phrasebook with Useful Wordlist

出版年:1981 出版社:Center for Applied Linguistics 出版地:Washington DC, USA
実用度:☆☆☆☆ 用途:入門向

アメリカに移住したモン族のために書かれたフレーズブックで、モン語の記述RPA方が分かっていないと読めません。何度もリプリントしているせいか文字が潰れ気味ですが、それでも登場するフレーズは使用頻度の高いもので、かなりお勧めです。末尾の単語集は、モン語−英語、英語−モン語でして、大変便利です。現在Amazon.comで注文できます。

モン語の読み書き

まずはじめにお断りしておかないといけないこととして、モン語に関する表記は、外国人宣教師によって開発されたものを中心によく知られているものとして現在14種類あり、さらにそれらの表記法から派生した複数の亜種があります。モン語の表記の多くはアルファベットを使用しての表記ですが、そのほかにもタイ語表記や、ラオス語表記、中国語表記などの多言語による表記を含めると手もつけられません。そして、チャオ・ファースクリプトという、独自の文字を使用する方法も現在では存在します。

また、タイのモン族に関しては、話すことはできても読み書きができない方がほとんどです。

同語族のヤオ族の一部が漢字を使用するのと異なり、モン族がなぜ、文字を持たないか、と言うことに関しては、モンの民話(これはいずれ別項で書きます)によってモン族の内部では説明されています。

このモン語の表記法に関する話題は

William A. Smalley, Chia Koua Vang, and Gnia Yee Yang, Mother of Wrinting,
The Origin and Development of a Hmong Messianic Script
, 1990, Chicago
University Press

のChapter11 Ohter Hmong Wrinting Systemに詳しいです。そんな複数の表記の中で、海外に出て行ったモン族の中で使用されている表記法が、Romanized
Popular Alphabet
、通称RPA方式と呼ばれる表記法です。

まとめますが、タイに限って言えばモン族の人口比率としては、RPA表記のモン語は書けないのが多数派で、ラオス、ベトナムでも、同様です。世に出ているモン語関係の書籍は単に海外に出て行ったモン族によるRPA方式で書かれているために、RPA表記が主流となっているだけのことで、東南アジア地域のモン族と接する分には、文字表記まで学ぶ必要はないと思われます。

Cooper, Robert ed., The Hmong

出版年:1998 出版社:Times Editions Pte Ltd 出版地:Singapore ISBN:981-204-803-0 実用度:☆☆☆☆☆

用途:読み書きモン語入門

モン研究の大御所、クーパー、タップ、などがまとめたモン族の入門書です。この書籍の末尾pp158-159に、RPA方式の記述法と発音についてまとめてあります。この部分だけコピーしておけば、とりあえずですが、文章を読むことはできるようになります。現在Amazon.comで注文できます。

Nyeem Ntawv Hmoob

出版年:1992 出版社:Rooj NTawv Hmoob 出版地:Bangkok 実用度:☆☆☆

モン語区別:白モン語 用途:読み書きモン語入門

この本の用途がよくわからないんですが、RPA表記の入門書として、実にコンパクトにまとめてあり、その分初学者(<つまり私のこと)にはつらいです。モンネイティブの人向けに書かれた表記法の入門書です。現在の入手状況は不明です。

Ntawv
Hmoob Dawb

出版年:1983 出版社:The Center for AppliedLingusitics 出版地:Washington,D.C., USA
ISBN:0-82871-318-5モン語区別:白モン語 実用度:☆☆☆

用途:読み書きモン語用

これは、アメリカ国内に移住したモン族のコミュニティが中心となって発行した本で、「モン語を話せる人が書くことができるようになる」ための本です。モン語の単語がある程度わかることが前提になっています。以下で紹介するような、モン語の辞書がないと、ちょっとつらいかと思います。現在の入手状況は不明です。

辞書

Dictionnaire Hmong-Francais

出版年:1979 出版社:Assumption Press 出版地:Bangkok Thailand

モン語区別:白モン語 実用度:☆☆☆☆

用途:辞書

モン語−フランス語の辞書。1964年にベトナムで出版され、以降、1979年にバンコクのアサンプションで再版されたもの。品詞の区別はもちろん、発音記号などもまるでないが、とにかく使いやすい。モン語の勉強と同時にフランス語の勉強も必要になるという、まさに一石二鳥の辞書<ほめ殺し。つ、つらい。チェンマイ大学図書館においてあります。

Lang Xiong, Joua Xiong and Nao Leng Xiong, English
– Mong – English Dictionary

出版年:1983 出版社:Xiong 出版地:Milwaukee, US

(再版が、1984年にバンコクのPandora社から出ています)

モン語区別:白モン語 実用度:☆☆☆☆

用途:辞書

英語−モン語、モン語−英語の辞書が一冊になったもの。オリジナルはコンパクトな仕上がりで、持って歩く分にもちょうど良いサイズ。だが、もはやオリジナルを手に入れることは難しく、筆者の手元にあるのはチェンマイ大学でコピーしたA4サイズ2本組のもので、とても使いにくい(T-T)。でも、本文は見出しの活字と本文のフォントが変えてあるために、とても見やすい。もし古本屋で見かけたら、速攻ゲットの一冊です。っていうか、余っていたら僕に売ってください(T-T)。チュラロンコン大学図書館、チェンマイ大学図書館においてあります。

White
Hmong -English Dictionary

出版年:1979 出版社:Southeast Asia Program, Cornell University 出版地:Ithaca, New
York, USA ISBN:0-88727-075-9 モン語区別:白モン語 実用度:☆☆☆

用途:辞書

コーネル大学アジアプログラム発行の白モン−英語辞書です。細かく調査してあるが、とにかく使いにくいの一言につきます。言語学の研究者が使うための資料としていいのかもしれません。末尾には、簡単な文法の説明もあり、これは一読に値します。もはや古本以外で入手は不可能だと思われます。White
Lotusの古本コーナーをまめにチェックしてなかったら、チュラロンコン大学図書館、チェンマイ大学図書館でコピーを。

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