タイへの留学

タイに留学する・・・これはいろんな意味でとてもすごいことです。

まず、なんといっても他の留学地と異なり日本に戻ってきたときに、一般企業ではキャリアとして認められない可能性が高い。一生研究で食っていくか、あるいはタイに関する仕事を続けていくなら話は別だろう。でも、アメリカやイギリスやフランスに留学するのとは違って、誰もが評価するようなものではない。仮に一生研究で食っていくにしても、この少子化の流れもあるし、そもそもタイ関連の講座を置いているところじたいが少ない。どんな専攻であれ、今後大学で研究職につく、それもタイ関連分野、となるととても狭い門だろう。まあ、みんな地域研究の一つとしてタイをやっているんだ、というスタイルなんでしょうけど、なかなかそうはとってもらえない今日この頃。その上タイでタイ研究をするより、アメリカやイギリスでタイ研究をするメンバーの方が多くなっている今日このごろですし。

しかしそれでもそんなデメリットを引き受けてもそれでも、タイに行かなくちゃ、と思うなら、そりゃ行くべきだ、と思うわけです。

当初、僕とタイとのつながりも所詮『他人事』でしかなかったのに、タイ北部の山岳民族の方々との出会いの中で、僕のことを「ピーセンシュー」(千周にいちゃん)とよんでくれ、デング熱で倒れたときに心配そうにベッドの周りに集まってくれる子供達がいて、おまけに次にいったときには、春に生まれた新しい小犬に「センシュー」という名前をつけてくれたりなんかしたら、もう他人事じゃないんですよ。

で、そんな「もはやタイに行くということは他人事じゃない」となった僕はタイの留学準備を着々と進めていった訳ですが、実はけっこう前途多難です。博士課程を追い出された後も就職するのに苦労しましたし、僕よりも年上で就職口のない方もたくさんいます。

こういうケースをたどる人はひょっとしたら多いのではないかと思い、参考のために、留学するまでにいろいろ起こったことを書いておきます。

※ちなみに、吉井は「貧乏」という病気(by石川啄木)に冒されています。潤沢な資金があり、特に資金に困らないという方には以下のお話はぜんぜん参考にならないと思います。

タイの大学・大学院留学のパターン

タイの大学・大学院に留学する「ありうるパターン」としては

1 日本もしくは海外の大学もしくは大学院から交換留学で派遣
2 正規生として入学

というこの二つの手法が王道だと思います。

1 日本もしくは海外の大学もしくは大学院から交換留学で派遣

このような留学のパターンは、各大学によってちがいますので、所属している大学の事務で聞いてみてください。最大でも2年間といった感じで、大学の協定内容によっては学寮にも住めます。「語学研修を兼ねてちょっとタイに行ってきたい」という分には、これが一番のおすすめです。在タイの日本人留学生の多くはこのパターンです。

2 正規生として入学

正規生として入学するには、単純な話、現地に直接コンタクトをとって試験をうければいいわけです。タイの学生さんと同じように授業をうけたければ「現地でタイ語で試験をうける」ということになるのですが、これはかなりタイ語をやりこんでいないと難しいと思います。特に大学院に関しては、かなり高いタイ語の能力が要求されます。

学部レベルでは、タイでもチュラロンコン大学、タマサート大学、チェンマイ大学といった多くの大学で、タイスタディーズなどの英語プログラムもたくさん開講されています。タイ語の能力は特に必要とされておらず、TOEFLで550ぐらいあれば、チュラロンコン大学やタマサート大学などのタイスタディーにはわりと簡単に留学できるようです。

大学院のほうはどうかというと、正規の学生としてタイの人々と同じように授業をうけるとなると、かなりタイ語をやりこんでいないと厳しいと思われます。ただし、大学院のプログラムには、タマサート大学のMIR(Master of International Relation Program)、チェンマイ大学の国際社会科学プログラムなどを筆頭に英語プログラムもあるので、それもいいかもしれません。MBAのプログラムなどもありますので、欧米の費用の何分の1かのコストで済むので、そういったことを目的にこられてもいいかもしれません。また、タマサートの経済学研究科のように、博士まで、すべての授業を英語でやることが前提、というプログラムもあるのでそれも選択肢にいれていいかもしれません。

しかし、問題はここからなのですが、「タイ語が(現時点で)あまりでず、英語のプログラムが開講されていない専攻」の場合どうすればいいのでしょう。つまり、タイにきてから本格的にタイ語を学ぶことにして、研究科に入ることはできないか、というきわめてムシのいい話です。

僕の場合がこのケースにあたっています。僕のケースはすでに慶應の博士課程に在籍していたため、修士や学士で開講されている外国人向けのプログラムはあまり興味がありません。それでは、博士課程はどうかというと、チュラロンコン・タマサートとも政治学の博士課程は外国人の枠を基本的には作っておらず、指導はすべてタイ語で行われるため、高度なタイ語の能力をまず前提としている。出発前にタイ語は「なんとかしゃべれる」程度の僕にはこれはキツイ。

さあて、どうしようかとタマサート大学・チュラロンコン大学の部署をたらいまわしにされたあげく、とっておきの抜け道が見つかりました。

それは研究所の訪問研究員(Visiting Researcher)となることです。ただこれには

1 少なくとも修士課程以上を終了・もしくは在籍であること
2 研究業績があること
3 受け入れ先の研究期間に空きがあること

といういくつかの条件が必要となります。そしてもう一つ大切なこととしてタイの学位は授与されないということがポイントです。ただし博士課程の学生でタイの学位が必要でなければ、これが一番無難な留学の方法だと思います。僕の所属することになった社会調査研究所には、デンマークの大学に所属している博士課程の学生が3人、日本からの留学生が2人、中国・フランスからの留学生が1人づついます。この方法は日本ではあまり一般的ではないけれども実は結構有効な手段です。

ただし、この方式で留学するためには「受け入れ先の研究所のメンバーと顔見知りになっておく」ことが必要かもしれません。むろん日本の担当教官と受け入れ先の教官が顔見知りの場合は、修士の学生でも訪問研究員の形で派遣してもらえることもあります。僕の場合は研究所の訪問研究員になるために、複数の大学の研究所に送った結果、チュラロンコン大学ともう一校以外はまったくコネクションがなかったものの、すべて許可されました。コネクションはないよりはあったほうがいいと思うけれども、とにかく研究計画書とレジュメの中身がまず第一です。僕の場合は、エスニシティの問題、住民運動、そしてインターネットを介したメディア研究というテーマが今とてもホットなものになっていたし、幸いにもたまたま論文があったこともプラスに働いたわけです。もちろん、日本人の学生さんで同じように訪問研究員の希望をいくつか出してすべて拒否された人もいますが、日本の博士課程に在籍しており、自分で研究を進めることができる、そしてタイの学位はいらない、というぐらいであれば、はなっから訪問研究員を目指すのもいいのかもしれません。

※一応お断りしておきますが、タイの教授陣はほとんどアメリカやイギリスなどでPh.Dをとっているため、実力主義をとる方が多く、日本の有名大学のネームバリューなどあまり通用しません。ロータリー財団の奨学金は、「ロータリーで奨学金をもらうくらい優秀である」といわれ(<僕が優秀かどうかはさておき、そのように面談の際に言われた)、様々な審査を飛ばして留学を可能にしてくれる免罪符になってくれるようです。実際に大使館でも「ロータリーの奨学生なら大丈夫」と言われて、留学が決まりました。

資金

さて、留学する意志を決めた後、次に問題になるのは資金です。すべて自分でまかなうという方は、以下のお話は関係ありません。

奨学金をうけるには複数の団体にレジュメを送ってお願いをするわけですが、僕の場合はロータリー財団の奨学金をうけることで落ち着きました。というよりも、「手始めに」と思って受けたこの奨学金になんと一発でパスしてしまったため、これに決めたというのが本当のところですが。いえ、自分でもまさか受かると思っていなかったのです。

ロータリー財団は地域によっては、倍率がとても高くなります。僕が応募した2750地区はこのエリアに多くの大学が密集しているため、日本の中でも激戦区で、30倍以上の倍率がありました。当時僕の英語の実力はTOEFLで550程度・・・。なんとこの地区では、大学院に入学するのに(学部生は別にして)この程度の英語力はざらにいるので、まずこのスコアでは受からないそうです。実は僕が何で残ったのか、今でも不思議なのですが、タイに行くということを強調していたことが決め手になったのだと、今は思っています・・・いえ、これはウソです。あきらかに他の方と違ったことをしたので受かったと確信しています。ちょっとこうした場所では書けないので、個別に聞いて下さい。

ロータリーの意向としては、なるべく東南アジアの国々に派遣したいそうなので、これからタイに行かれる方にはおすすめの資金です。ほかの合格者はアメリカ・イギリス・フランス・スペイン、といったところに留学されるとのことで、僕のように「タイに行く」、というのはかなり異色な存在なのでしょう。でもこのおかげで年間$12,000の奨学金を手に入れることができました。

でも、年間$12,000では、生活がぎりぎりだなぁ、と思います。月に直すと10万円弱。タイは生活用品は確かにやすいけれども、それでも本とかはやっぱり高い。おまけにこの値段は、渡航費・保険代金・授業料込み、というお値段で、実際に留学してみてわかりましたが、語学学校に通い出すと、結構きついことがわかりました。そこで、今は家庭教師を4軒持って、不足分を補い、加えて日本の授業料を払っています。

VISAの申請

VISAの申請に必要なのは写真と入学許可証とお金とパスポート。詳しくはタイ大使館のホームページを拝見してください。しかし、このVISA申請ですが、申請する箇所で対応がまるで違います。僕のように研究目的で入国する人間にはREタイプ(Researcher)のビザが発給されるのですがその発行すらしてもらえませんでした。まったく同じ待遇で、同じ研究所にいる日本人は目黒の大使館で申請したのですが、彼はREビザを発給してもらえたようです。タイに入国してからトラブルが生じるのが怖かったら、ちょっと面倒でも目黒の大使館に行った方がいいです。

海外障害保険

あと「当然」加入しておきたいのが「海外保険」です。海外旅行保険と違い、留学向けの保険では、家財保険、火災保険といったものも含まれます。このような保険を扱っている保険会社は、日本では数社あります。その中で僕が選択したのは、AIUです。AIUのほうが他社に比べて若干高めですが、、住宅に関する保険が充実しているのがすごいです。というのも、タイに在住の友人から部屋のトラブルに結構泣かされたという話は聞いていたし、場所によっては、一階のアパートなどだと雨期に浸水もあるということなので、しっかりしておいたほうがいいと思います。

また現在就職してからはANAカードのゴールドカードを利用しているのですが、これに付随する保険も結構使えます。ただしこちらの保険は3ヶ月に一度日本に帰国することが前提です。1年間留学する場合の海外傷害保険を大体20万円前後で各社とも取り扱っていますので、もしタイ−日本間を3ヶ月に1度帰国するというのであれば、ゴールドカードの付随保険で大丈夫です。
※おまけで書くとゴールドカードより手当の厚いプラチナカードを当方は利用しています。年間約10万円の費用がかかりますが、日本国内のサービスなども含めて家族で滞在する場合に限って言うと確実にモトはとれます。

コンピュータ

研究生活において、今や欠かせなくなったコンピュータも大事です。実家と連絡を取るときももっとも安価で速いです。とりあえずは、マルチヴォルテージ対応のアダプタを持つノートパソコンで十分に対応できます。プロバイダーの選定、機器の選定については、別頁をごらんください。

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